2017年度から新しい専門医制度がはじまります。今年医学部を卒業した医師から対象となる新制度は、旧来の専門医制度とは大きく異なるものです。
19の基本領域における専門研修プログラム整備基準が一般社団法人 日本専門医機構のウェブサイトで順次公表されています。
総合診療科についても公表されております。理念と使命、そしてアウトカム(専門研修後の成果、とあります)が示されており、重要な部分のため抜粋してご紹介しておきます。
領域専門制度の理念
現在、地域の病院や診療所の医師が、かかりつけ医として地域医療を支えている。今後の日本社会の急速な高齢化等を踏まえると、健康にかかわる問題について適切な初期対応等を行う医師が必要となることから、総合的な診療能力を有する医師の専門性を評価し、新たな基本診療領域の専門医と位置づける。
以下の3つの理念に基づいて制度を構築する。
(1) 総合診療専門医の質の向上を図り、以て、国民の健康・福祉に貢献することを第 一の目的とする。
(2) 地域で活躍する総合診療専門医が、誇りをもって診療等に従事できる専門医資格とする。特に、これから、総合診療専門医資格の取得を目指す若手医師にとって、夢と希望を与える制度となることを目指す。
(3) 我が国の今後の医療提供体制の構築に資する制度とする。
これまでの全人的に把握する、家族を把握するといった家庭医療的視点から、より地域にも目を向けたものへとシフトしている印象を受けます。日本社会の急速な高齢化を念頭に置き、かかりつけ医としての地域医療の役割の重要性について、しっかりと押さえられている理念となっています。
領域専門医の使命
日常遭遇する疾病と傷害等に対して適切な初期対応と必要に応じた継続的な診療を全人的に提供するとともに、地域のニーズを踏まえた疾病の予防、介護、看とりなど保健・ 医療・介護・福祉活動に取り組み、絶えざる自己研鑽を重ねながら人々の命と健康に関わる幅広い問題について適切に対応する使命を担う。
ここでもやはり地域のニーズを踏まえることが明記されています。使命のなかに看とりが含まれたところが、注目でしょうか。
専門研修後の成果(Outcome)
地域を支える診療所や病院においては、他の領域別専門医、一般の医師、歯科医師、 医療や健康に関わるその他職種等と連携して、地域の保健・医療・介護・福祉等の 様々な分野におけるリーダーシップを発揮しつつ、多様な医療サービス(在宅医療、緩 和ケア、高齢者ケア、等を含む)を包括的かつ柔軟に提供できる。
また、総合診療部門を有する病院においては、臓器別でない病棟診療(高齢入院患者や心理・社会・倫理 的問題を含む複数の健康問題を抱える患者の包括ケア、癌・非癌患者の緩和ケア等)と臓器別でない外来診療(救急や複数の健康問題をもつ患者への包括的ケア)を提供することができる。
具体的には以下の6つのコアコンピテンシーを獲得することを目指す。
1.人間中心の医療・ケア
2.包括的統合アプローチ
3.連携重視のマネジメント
4.地域志向アプローチ
5.公益に資する職業規範
6.診療の場の多様性
6つの要素がアウトカムとして設定されています。
ここにも「地域志向アプローチ」が含まれています。「診療の場の多様性」というのはコンピテンシーというよりは総合診療科の特徴のようにも思われますが、多様な診療の場に対応できる能力ということでしょうか。
これらの内容が専門研修プログラムに反映され、将来の総合診療専門医の柱となる概念になっていくことでしょう。
今後も注視していきたいと思います。