営利を目的としない4つの条件

 

どこまで非営利か?

 医療法人は営利を目的として事業を行うことを禁止しています。この根拠について、確認しておきます。

 この問題については、平成15年から17年にかけて厚生労働省で行われた「医業経営の非営利性等に関する検討会」の資料が参考となりました。ここから適宜引用しながら、まとめておきます。

www.mhlw.go.jp

医療法人制度が創設された昭和25年の厚生事務次官通知では、医療法人制度創設の目的を「私人による病院経営の経済的困難を、医療事業の経営主体に対し、法人格取得の途を拓き、資金集積の方途を容易に講ぜしめること」と定義し、医療法人の行う事業は「病院又は一定規模以上の診療所の経営を主たる目的とするものでなければならないが、それ以外に積極的な公益性は要求されず、この点で民法上の公益法人と区別され、又その営利性については剰余金の配当を禁止することにより、営利法人たることを否定されており、この点で商法上の会社と区別されること」としている。

 

 剰余金の配当を禁止することが、営利法人と大きく異なる点である、ということのようです。

このように医療法人は制度創設以来、医療法第54条の「剰余金の配当をしては ならない」との規定の下、「営利を目的としない」民間非営利部門の法人として国民に対し良質かつ適切な医療を提供してきている。

 

 剰余金の配当をしないという医療法第54条に抵触しないことを確認の上、医療法人開設が認められています。

一方で、制度創設から50年以上経過した医療法人制度については、
(1) 様々な手段を通じて事実上の配当を行っているのではないか、
(2) 医療法人の内部留保を 通じて個人財産を蓄積し、社員の退社時にまとめて剰余金を払い戻すことによって、 事実上の配当を行っているのではないか、
(3) いわゆるMS法人などの営利法人に利益を移転することによって事実上医療法人の経営が営利を目的としたものとなっているのではないか、
といった指摘があり、医療法人の「営利を目的としない」 という考え方が形骸化しているとの主張があることも確かである。

 

 やはり、この医療の非営利性については解釈も多様となっており、形骸化している、あるいは線引きがはっきりしないところがあるようにも思われます。

 この検討会は、株式会社の医業経営参入問題が議論されはじめた頃、このような医療法人の現状を受けて開催されることになったようです。

「営利を目的としない」ということはどういうものであるのか改めてその考えを整理するとともに、医療法人は民間の法人であって「営利を目的としない」ものであることを再確認し、 営利を目的としている営利法人とは明らかに違うものであることを明確にすることは、医療法人制度に関する国民の理解を高めるためにも大切なことである。このため、すべての医療法人に共通する考え方として、①「営利を目的としない」とは どういうものか、②民間非営利部門である医療法人に必要な規律とはどういうもの かについて検討した結果を以下の通り整理する。

 

 とあり、詳細は報告書に記載されています。

 

営利を目的としない4条件

  営利を目的としない、という定義については、以下のように4条件が示されています。

「営利を目的としない」とは、社団医療法人の社員における権利・義務の内容について、
ア)出資義務を負わない、
イ)利益(剰余金)分配請求権を有しない、
ウ)残余財産分配請求権を有しない、
エ)法人財産に対する持分を有しないこと
と整理すべきものである。

 

 簡単に言えば、営利性とは儲けようとすることではなく、儲けたお金を分配しようとすることのようです。

 重要な点なので、よく覚えておきたいと思います。

 

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