ジェネラルを師に学ぶ

 

 本の紹介です。献本御礼申し上げます。

 月刊誌「月刊地域医学」に掲載されたインタビュー記事120本の中から21本を選りすぐり編集されたものです。

 これまでこのブログでも取り上げています *1 *2 が、地域医療の分野に大きな影響を与えた「地域医療の師匠」五十嵐正紘さん(故人)の貴重なインタビュー2本が掲載されています。家庭医療学研究会の最初の代表世話人だったんですね。

 引用としていくつか拾ってみたいと思います。

患者の意思決定の中には「自分では意思決定しない」ということも含まれているわけですが、EBMというのは医者の意思決定方法ですね。医者の医療判断と患者がどういう医療判断をしているかという両方が相まって初めていい判断ができる。だけど今の医療判断学というのは医者の医療判断学であって、患者がどういうふうに物事を考えて、判断して、OKを出したり、NOと言っているのかはよく分からない。

「この道一筋」からは新しいことは生まれない。その道一筋だと熟練工にはなれるかもしれませんが、ぜひ二股をかけた方がいい。

 

 有名なコトバ「ここにこのままいると没落する」は、地域で一人で診療していると、医療の面で批判者がいなくなることを危惧したコトバでした。

 「この道一筋」も同じような意味でしょう。

 

 医者も多様な人が交じり合ったほうがよい。患者と医者も交じり合って判断したほうがよい。そして、そのことをよく研究すべきだ、という明確なメッセージが伝わります。

 EBMについては、医者の意思決定方法に過ぎない、という点をここで改めて確認しておきたいです。その先のところは、いまだ十分な研究がなされていませんが、取り組むべき重要な課題だと思います。

同じ人、同じ家庭、同じ地域にずっと携わる。これが総合医の特徴で、分化医は、同じ技術がずっとあるということが特徴。

プライマリケアのもう一つの特徴は、不確実で、曖昧で、カオスで、複雑な中で、どうやって患者さんとやっていくか。私たちはそういう世界の中で、ある意味の専門家と言える。

徹底的に現場のデータに基づきながら理論ができていくというのが、プライマリケアの一番重要な研究だと思う。

 

 同じ地域で同じ人や家庭を何度も診ることによって、時間をかけてだんだんわかってくることがあります。その中で生じる曖昧な問題に、正面から向き合っていく姿勢がジェネラリズムの本質、ということでしょう。

 明日からまた、がんばりたいと思います。

 

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