はじめにの衝撃
ふと、本棚にあった本を手にしました。随分前にざっと読んだおぼろげな記憶がありましたが、あらためてどんなことが書いていたのだろうと、最初のページをめくったところで、手が止まりました。
五十嵐正紘さんの「はじめに」です。かぜっぴきの医者たるもの、小児を診療する際にはこれからの100年を見据えた視点で対応すべきだ、というものでした。
こどもがかぜをひいて外来を受診します。それが人生はじめての医療体験になることが多いことでしょう。そこでかぜをどうするか、という問題に対処するわけですが、外来はそれだけが目的ではない、と五十嵐さんは書かれています。
これから先、長い人生において、どのように病気と向き合っていくか、どのように健康に気をつけていくか、時間をかけて親と一緒に考え、学んでもらう機会としていくことの端緒になる大切な時間だ、というものでした。
重く、衝撃的なメッセージです。
家庭医の時間軸
これまで病気の治療方針を考える場面において、つまり、この先治療をどうするかといった問題を考えるとき、急性疾患ではせいぜい週単位、慢性疾患でも月から年単位の時間軸でしか、とらえることはありませんでした。
乳児から100歳以上の超高齢者まで診療していますが、無意識のうちに、年代別にそれぞれの時間軸を考慮していると思います。高齢者では100歳はよく話題にもなり、念頭におくことも多いですが、小児が100歳になることなど、外来で想像したこともありませんでした。
自分はこの世にはいませんが、その後のことまで見据えなさいということでしょう。
これは家庭医の診療においては、重要な視座のひとつに違いありません。
どうしても目の前の問題にフォーカスしてしまいがちな診療を、大きく変えていかなければならないかもしれませんが、これから新たな目標のひとつとして取り組んでみたいと思います。
五十嵐の10の軸という海図とともに、この本を再読してみたいと思います。