こどもの100年を見据えた診療

 

はじめにの衝撃

 ふと、本棚にあった本を手にしました。随分前にざっと読んだおぼろげな記憶がありましたが、あらためてどんなことが書いていたのだろうと、最初のページをめくったところで、手が止まりました。

外来小児科初診の心得21か条 (総合診療ブックス)

外来小児科初診の心得21か条 (総合診療ブックス)

 

 

 五十嵐正紘さんの「はじめに」です。かぜっぴきの医者たるもの、小児を診療する際にはこれからの100年を見据えた視点で対応すべきだ、というものでした。

 

 こどもがかぜをひいて外来を受診します。それが人生はじめての医療体験になることが多いことでしょう。そこでかぜをどうするか、という問題に対処するわけですが、外来はそれだけが目的ではない、と五十嵐さんは書かれています。

 これから先、長い人生において、どのように病気と向き合っていくか、どのように健康に気をつけていくか、時間をかけて親と一緒に考え、学んでもらう機会としていくことの端緒になる大切な時間だ、というものでした。

 

 重く、衝撃的なメッセージです。

 

家庭医の時間軸 

 これまで病気の治療方針を考える場面において、つまり、この先治療をどうするかといった問題を考えるとき、急性疾患ではせいぜい週単位、慢性疾患でも月から年単位の時間軸でしか、とらえることはありませんでした。

 乳児から100歳以上の超高齢者まで診療していますが、無意識のうちに、年代別にそれぞれの時間軸を考慮していると思います。高齢者では100歳はよく話題にもなり、念頭におくことも多いですが、小児が100歳になることなど、外来で想像したこともありませんでした。

 自分はこの世にはいませんが、その後のことまで見据えなさいということでしょう。

 これは家庭医の診療においては、重要な視座のひとつに違いありません。

 どうしても目の前の問題にフォーカスしてしまいがちな診療を、大きく変えていかなければならないかもしれませんが、これから新たな目標のひとつとして取り組んでみたいと思います。

 

 五十嵐の10の軸という海図とともに、この本を再読してみたいと思います。

www.bycomet.com

 

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