PM2.5や排気ガスの記事が多くなりましたが、空気の違いを意識するから少し離れていきます。
最近は黄砂もよく話題になりますね。黄砂は英語では"Asian sand dust""Asian dust"。「アジアの塵」と呼ばれているようです。
黄砂はどれほど健康に影響があるのでしょうか。調べてみました。
黄砂の健康への影響
Googleで、日本語の2010年のシステマティックレビューが検索されました。PDFで公開されていますので、すぐ閲覧できると思います。
橋爪真弘, 上田佳代, 西脇祐司, 道川武紘, 小野塚大介. 黄砂の健康影響 : 疫学文献レビュー. 日本衞生學雜誌 2010; 65(3):413-421
- 黄砂日と死亡者・患者数を比較するデザインや短期的影響の報告が目立つ。
- いくつかの文献においては、黄砂の飛来日またはその数日後に呼吸器疾患や心疾患による死亡または受診・入院の増加との関連があったが、統計学的に有意差のみられない文献が多数。
- いずれも黄砂曝露指標や調整すべき交絡因子が統一されておらず、地域間比較も困難。
このような報告でした。
PubMedでは最近の報告も散見されましたが、論文数は少ないようです。Clinical Queriesで検索してみました。
システマティックレビューは4件のみで、今回の疑問には合致せず。
Therapy/Broad[filter]で47件みつかりました。そのうち、トップに日本の論文がありましたので、読んでみました。
黄砂で死亡は増加するか?
論文はこちら。
Kashima S, Yorifuji T, Tsuda T, Eboshida A. Asian dust and daily all-cause or cause-specific mortality in western Japan. Occup Environ Med. 2012Dec;69(12):908-15. doi: 10.1136/oemed-2012-100797. Epub 2012 Oct 19. Erratum in: Occup Environ Med. 2013 Jan;70(1):72. PubMed PMID: 23085558.
P▶ 日本の山陰地方に住む65歳以上の高齢者は
E▶ 黄砂の飛来が増えると
C▶
O▶ 死亡が増加するか(SPMと独立して)
T▶ 予後、時系列研究
《結果》※※
黄砂はSPMと独立した影響を与えている。
黄砂飛来0-2日において黄砂が10 μ/m3 増加するごとに、
心疾患死亡 0.6%増加 (95% CI 0.1 to 1.1)
虚血性心疾患死亡 0.8%増加 (95% CI 0.1 to 1.6)
不整脈死亡 2.1%増加 (95% CI 0.3 to 3.9)
肺炎死亡 0.5%増加 (95% CI 0.2 to 0.8)
がみられた。
総死亡については有意差がなかった。
(注)SPM:浮遊粒子状物質
という結果でした。やはり、循環器や呼吸器疾患は少し増えている可能性があります。
特に山陰地方の南部よりも北部で影響がみられているようです。
喘息についてはどうでしょうか?ついでに少し調べてみたいと思います。
今回の内容をまとめてみます。
- 黄砂の飛来によって総死亡が多くなるという報告はない。
- 虚血性心疾患、不整脈、肺炎などによる死亡は少し多くなっている可能性がある。
※記事内容は論文を紹介するものであり、一定の学術的な見解や治療指針を示すものではありません。詳細は原著論文をご参照ください。