外来を受診された方から質問を受けました。
「かぜの家族内感染予防に、クレベリンを置いたほうがよいですか?」
「クレベリン?」
最近、CMで宣伝しているようなのですが、何のことかわかりませんでした・・・。早速、Google検索。
「低濃度二酸化塩素ガスの有効性」というページがありました。確認してみましょう。
大幸薬品 クレベリンあの「正露丸」の大幸薬品ですね。二酸化塩素分子がウイルスや細菌を99%除去、とのこと。実際の効果は検証されているのでしょうか。
「低濃度二酸化塩素ガスの有効性」というページがありました。確認してみましょう。
低濃度二酸化塩素ガスの効果
クレベリンGの設置実験
冬期の小学校で、クレベリン Gを設置した教室では、設置しない教室に比べ、欠席率が有意に低下しました。欠席率をアウトカムとしたランダム化比較試験が行われたのでしょうか?引用文献が記載されておりましたが、ご親切にもこの論文の日本語訳が公開されておりました。PDFもダウンロードできます。
大幸薬品の研究成果:二酸化塩素に関する研究
Effect of chlorine dioxide gas of extremely low concentration on absenteeism of schoolchildren Norio Ogata and Takashi Shibata. International Journal of Medicine and Medical Sciences Vol. 1(7) pp. 288-289, July, 2009PubMed未収載でした。論文を読んでみましょう。
■小学生に対して
■教室に二酸化塩素(ClO2)ガス発生器具を設置すると
■設置なしに比べて
■欠席率が低下するか
■予防、非ランダム化比較試験
■結果(※)消臭剤として置いたところ、思いがけず欠席率が低かった、という報告のようです。ランダム化もされていません。ひとつの仮説が提示された報告ではありますが、これだけでは有効性が示されたとはいえず、今後検証が必要でしょう。
連続38授業日間の学童欠席率
ClO2を設置した教室(1教室) 20人/1272人 1.5%
設置しなかった教室(17教室) 900人/21634人 4.0%
(p < 0.00001)
この期間中の欠席の主要な原因は、風邪およびインフルエンザであった。
インフルエンザに対する効果については、マウスの実験が報告されているのみです。
Ogata N, Shibata T. Protective effect of low-concentration chlorine dioxidegas against influenza A virus infection. J Gen Virol. 2008 Jan;89(Pt 1):60-7.PubMed PMID: 18089729.ヒトの有効性の検証はこれからです。
低濃度二酸化塩素の安全性は?
さらに気になるのは安全性です。この報告では、消臭剤として使用されているので、教室に設置するのは問題ないと判断したと思われます。しかし、2012年2月に同じ研究グループから安全性に関するラットの研究が発表されたばかりです。
Akamatsu A, Lee C, Morino H, Miura T, Ogata N, Shibata T. Six-month low level chlorine dioxide gas inhalation toxicity study with two-week recovery period inrats. J Occup Med Toxicol. 2012 Feb 21;7:2. doi: 10.1186/1745-6673-7-2. PubMedPMID: 22348507; PubMed Central PMCID: PMC3298712.医薬品では安全性の検証がなされる前に市販されることはありません。長期間設置した場合の安全性については、まだヒトでは検証されていないことには注意が必要です。
効果も安全性についても、検証はまだこれから。積極的な推奨は控えたいと思います。