急性喉頭蓋炎と診断するには?

 

  急性喉頭蓋炎の症状のひとつに、嚥下時痛があります。この症状はどれほど診断に有用な症状なのでしょうか。また、急性喉頭蓋炎を診断するのに、他に有用な症状や所見はあるのでしょうか?

  DynaMedには記載がありませんでした。PubMedのClinical Queriesにて検索。"acute epiglottitis (diagnosis/narrow)"で検索したところ、なんと4件のみ!


  このうちの1件が急性喉頭蓋炎とクループの症状・所見を比較検討した2011年オーストラリアの論文でした。PDFにて全文閲覧できます。

Tibballs J, Watson T. Symptoms and signs differentiating croup andepiglottitis. J Paediatr Child Health. 2011 Mar;47(3):77-82. doi:10.1111/j.1440-1754.2010.01892.x. Epub 2010 Nov 21. PubMed PMID: 21091577. 
■急性上気道閉塞にて小児病院のICUへ入室した小児について
■どんな所見があれば
■急性喉頭蓋炎またはクループと診断できるか
■診断、前向きコホート 
■結果(※※)
クループについては
「咳がある」 感度 100%(95%信頼区間 96-100%)、特異度 98%(95%信頼区間 93-99%)
急性喉頭蓋炎については
「流涎がある」 感度 79%(95%信頼区間 70-86%)、特異度 94%(95%信頼区間 88-97%)
他に急性喉頭蓋炎について信頼性の高い徴候は
「座りたがる」「嚥下拒否または嚥下困難」
急性喉頭蓋炎の37%、クループの16%は、確定診断される前に少なくとも1回以上別の診断がくだされていた。
 

座りたがる、流涎がある、咳がない

  座りたがるのは急性喉頭蓋炎の特徴的な症状であることは、注目すべき知見ですね。嚥下拒否や嚥下困難も特徴的な症状のようですが、感度・特異度については記載されていませんでした。

  急性喉頭蓋炎については、流涎があり咳がない場合にはかなり可能性が高くなるということでしょう。

ヒブワクチンで劇的に減少

  オーストラリアでは1993年からHibワクチンが導入されていますが、それ以降、急性喉頭蓋炎は激減しているようです。

  確かに、減っています。著者らは、急性喉頭蓋炎の発症が少なくなることで、よりクループとの鑑別が困難となってきていると警鐘を鳴らしています。

  国内での急性喉頭蓋炎の発症数推移はどのようになっているのでしょうか?Google検索ではすぐに見つけられませんでしたが、厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会「ワクチン評価に関する小委員会 報告書」(平成23年3月11日!!)によると、

Hibによる侵襲性感染症には菌血症、細菌性髄膜炎、急性喉頭蓋炎などがある。わが国の年間発症数は、主として5歳未満児にHib 髄膜炎が約400例、Hib髄膜炎以外の侵襲性感染症が約200~300例と推計されるが、実数より過小評価している可能性がある。

とあります。いまだに年間200例程度の発症がみられているのかもしれません。

  急性喉頭蓋炎も死に至る怖い病気です。ぜひヒブワクチンを。

※詳細は原著論文をご参照ください。

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