コレステロールと血圧、厳しく下げても効果なし

 

  すでに冠動脈疾患があるハイリスクの日本人では、コレステロールや血圧を厳しく下げたほうがよいのか―この疑問を検証した研究が、2011年8月に発表されています。

Kohro T, Yamazaki T, Izumi T, Daida H, Kurabayashi M, Miyauchi K, Tojo T,Nagai R; JCADII Investigators. Intensively lowering both low-density lipoprotein cholesterol and blood pressure does not reduce cardiovascular risk in Japanesecoronary artery disease patients. Circ J. 2011 Aug 25;75(9):2062-70. Epub 2011Aug 3. PubMed PMID: 21817806. 
■主要冠動脈にひとつ以上の冠動脈狭窄(75%以上)がある冠動脈疾患患者に
■収縮期血圧<120mmHg、拡張期血圧<80mmHg、LDLコレステロール<80mg/dlを目標とした厳格治療を行うと
■収縮期血圧<140mmHg、拡張期血圧<90mmHg、LDLコレステロール<100mg/dlを目標とした従来治療と比べて
■総死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈再建術、脳卒中、血管疾患をあわせた複合アウトカムが減るか
■治療、ランダム化比較試験
■結果(※※※)
厳格治療:26/244(10.7%)
従来治療:18/254(7.1%)
ハザード比 1.53 (95%信頼区間 0.84–2.8)

厳格治療のほうが発症が多い

  有意差にはなっていませんが、厳格治療したほうが1.53倍発症が多い、という結果でした。「厳しく治療すればするほどよい」というこれまでの原則は、正解ではなさそうです。

  この研究、少し気がかりなところがあります。ランダム割り付けしたはずなのですが、両群の人数がそろっていません。

  Figure 1を見てみると、ランダム割り付けしたあとで14人が脱落しています。

14 patients were excluded because they failed to take the study drug


  発症数が18人対26人ですから、この14人の経過によっては結果が逆転したり、差がさらに開いていたりと、結論に大きく影響がある数字ではあります。そのような人数が、ランダム割り付けしたあとかつ治療前に脱落している時点で、やや説得力に欠けるものになってしまったことが残念です。

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