BMJ誌の2010年6月に発表された論文の要旨が、「薬害オンブズパーソン」のウェブサイトに掲載されています。
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Cohen D, Carter P. Conflicts of interest. WHO and the pandemic flu "conspiracies". BMJ. 2010 Jun 3;340:c2912. doi: 10.1136/bmj.c2912. PubMed PMID:20525679.
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WHOのパンデミック政策は製薬企業の影響下にある
(BMJ誌がWHOの利益相反問題を検証)2010-08-11
2010年2月の注目情報で昨年のインフルエンザ・パンデミックに関し、欧州連合(EU)理事会が「虚偽のパンデミック、保健への脅威」のタイトルでディベート(討論)のための議会集会を開催したことを取り上げた(※1)。この情報の紹介者のコメントは「WHO(世界保健機関)と製薬企業の利益相反問題をきっちり検証する必要がある」と結ばれていた。BMJ誌電子版2010年6月3日号では、BMJ誌編集部が調査報道事務局(ロンドン)と合同で、このWHOと製薬企業の利益相反問題を検証している.( 「WHOとインフルエンザ・パンデミックの“陰謀”」、※2)。要旨を紹介する。
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要旨の概要は以下の通り。
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2009年6月11日、WHOのチャン事務総長が「2009インフルエンザ・パンデミック」のはじまりを宣言してから1年が経つ。WHOは長年にわたってパンデミックを「莫大な数の死亡と病気を引き起こす」アウトブレイク(突発事)と定義してきた。しかしWHOは2009年5月のはじめに、このパンデミックの定義から「病気の重篤度」を削除した。このため6月のパンデミック宣言は起こっていることの重篤度を何ら考慮せずに行われることになった。
1999年4月、WHOは、1997年の香港における鳥インフルエンザの発生を受けて「インフルエンザ・パンデミック計画: WHOの役割と国家・地域のためのガイドライン」を出版した。共同作成を担当した欧州インフルエンザ科学ワーキンググループ(ESWI)とは、ロシュ社と他のインフルエンザ薬製造企業が全額を出資している団体であるが、そのことは公表されなかった。
2002年10月、WHOは、ジュネーブで、インフルエンザ・パンデミックの際に用いるワクチンと抗ウイルス薬についてのガイドラインを作成するための専門家会議を開催した。参加者にはロシュ社とアベンティス・パスツールの代表、タミフルの販促物に名前を貸している3人の専門家が含まれていた。2年後にWHOガイドラインとして「インフルエンザ・パンデミック2004でのワクチンと抗ウイルス薬の使用」が出版された。このなかの「抗ウイルス薬の使用」はHayden氏(米国バージニア大学教授)が書いたものだが、彼はロシュ社やGSK社から金銭を受け取っていた。
WHOガイドラインは、「各国は抗ウイルス薬の備蓄に対する計画を立案すべき」としている。多くの国々がこのガイドラインに従って備蓄計画を立てた。Hayden氏はロシュ社がスポンサーの臨床試験論文で、タミフルは入院を60%減じると記載し、これがタミフルの主要なセールスポイントのひとつとなった。しかしコクラン共同計画ではこの論文を認めていない。
WHOは2005年に地球規模のインフルエンザ対処計画を作成、2006年にはインフルエンザパンデミック・タスクフォースを創設するが、この際も利益相反は公開されなかった。
2009年のパンデミック宣言についてWHOにアドバイスした「緊急委員会」については、16人のメンバーから構成されていると発表されているが、委員長以外は名前が公表されていない。パンデミックについての方針を実質的に決定する極めて重要な委員会を秘密にすることについてWHOは「関連企業の影響から委員を守るため」と説明している。
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WHOでさえも利益相反を公開せず、ガイドラインに対する製薬会社の関与が疑われているようです。オンブズパーソンは、利益相反などの情報公開を徹底すべき、と結んでいます。
世界を恐怖に陥れたパンデミック、そのパンデミックがタミフルを販売するための偽装・販促活動だったとしたら・・・とても恐ろしいことです。疑惑を晴らすべく、WHOには全容を情報公開していただきたいと思います。