医療は誰のものか

 

  

 科学社会学と開かれた医療 - 地域医療日誌 by COMETにつづきます。


  さて、もう一冊の本はこちらです。科学社会学の一分野、科学技術社会論(Science, Technology and Society, STS)入門ともいえる一冊をご紹介します。

科学は誰のものか―社会の側から問い直す (生活人新書 328)
平川 秀幸
日本放送出版協会
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誰が科学技術の舵を取るのか

  1995年を転機に、日本では科学の信頼性が失墜していきました。完全無欠と思われていた科学技術を信奉していればよいという時代は終わり、科学は不確実なもので、社会の利害関係や価値観と絡み合っていることが認識されるようになりました。科学にも公共のガバナンス(舵取り)が必要ではないか、という考えが広まってきています。

  科学は誰のものか―もはや、限られた専門家のものではありません。科学なしでは解けないが、科学だけでは解けない問題があふれる現在、誰もが科学技術の問題に関わることが必要な時代となっています。本書では、公共的ガバナンスに踏み出すための提案がいろいろと紹介されています。

開かれた医療へ

  「ロレンツォのオイル」という実話映画を例に、ここでも「専門家顔負けの素人の専門性」である当事者の知の重要性が取り上げられています。
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ロレンツォのオイル/命の詩 - Wikipedia
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  当事者は当事者ならではの深い経験や知識、洞察を豊かに備えています。また、科学が問わない、科学が問えない問いを問うことができます。この当事者知(または現場知)を生かしていくこと、多様な知識や経験、知恵を交わらせていくことが、これからの科学には不可欠になっていくでしょう。

  科学の囲い込みを見直し、開かれた科学へ。医療も同じではないでしょうか。閉鎖性、秘匿性は現代の医療の特徴のようですが、もはや閉鎖的な科学は行き詰まりにさしかかっています。

  開かれた医療を展開していくために、どのような道があるのか。これからも模索していきたいと思います。

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