最近の健康診断やメタボ健診では、体重やBMI、腹囲測定など、肥満根絶のための医療が展開されています。
これはもちろん、科学的根拠に基づくもの、だったのですよね?肥満の人には病気が多い、ということと、減量すると病気がへる、ということは全く別のことです。
メタボ健診の有効性については、いろいろ議論が出ているようですが、ちょっと雲行きは怪しいようです。今回は、肥満に対する減量の効果について、調べてみることにしました。
PubMedなどで検索するとたくさんの論文がみつかると思っていましたが・・・どんなふうに減量すると体重が減った、血圧が下がった、血糖値が下がった、という代用のアウトカムを測定したものばかりで、減量すると寿命が伸びるのか、という真のアウトカムの研究はなかなかみつかりません。
減量すると寿命は伸びる、というのは常識、暗黙の了解となっているようでもあります。
死亡率を検証した研究を探したところ、2009年の貴重なメタ分析をみつけましたので、ご紹介します。
Harrington M, Gibson S, Cottrell RC. A review and meta-analysis of the effect of weight loss on all-cause mortality risk. Nutr Res Rev. 2009 Jun;22(1):93-108. Review. PubMed PMID: 19555520.
■オーバーウエイト(BMI25以上)の人のうちで
■減量した人は
■減量していない人に比べて
■死亡率は減るか
■予後、メタ分析
■結果
26の前向きコホート研究を統合したメタ分析
意図的に減量したもの(ダイエット)、意図せずに減量したもの、意図が不明のもの、の3群に分けて解析
さらに、対象者が健康な人と健康ではない人(定義不明)の2群に分けて解析
ダイエットしたもの:死亡率 相対危険 1.01(95%信頼区間 0.93~1.09)
そのうち、
健康な人:死亡率 相対危険 1.11(95%信頼区間 1.00~1.22)
健康ではない人:死亡率 相対危険 0.87(95%信頼区間 0.77~0.99)
衝撃的な結果です。ダイエットしても死亡率には影響しないという結果ですが、健康なオーバーウエイトの人についてはダイエットすると死亡率が11%増加する、という結果です。
健康ではない人(詳細ははっきり記載されていませんが、糖尿病や心疾患が含まれています)については、死亡率が13%低下するということで、ダイエットの効果が期待できるという結果です。
この研究は観察研究を統合したものであり、調整のしかたによって若干結果が変動すること、統合した研究自体に減量方法や体重測定方法にばらつきがあること、などの限界があることを著者も指摘しています。
しかし、現状のエビデンスからは、すべてのオーバーウエイトの人が減量すべき、というのは言い過ぎかもしれない、というところでしょう。リスクに応じた対応をしたいですね。