ジェネラリズムの危機(2)

 

 ジェネラリズムの危機(1) - 地域医療日誌 by COMET につづきます。

 週刊医学界新聞にこの話題が掲載されていました。

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医学書院/週刊医学界新聞(第2862号 2010年01月11日)

ゴードン・ノエル(オレゴン健康科学大学 内科教授)
大滝純司(東京医科大学 医学教育学講座教授)
松村真司(松村医院院長)

ジェネラルな能力はどのように修得すべきか

松村 日本と諸外国との大きな違いに,諸外国ではどの専門科に進むにしてもまずジェネラルな研修をして,その上で専門医を取るための研修を開始するということがありました。日本でも,「プライマリ・ケアの基本的な診療能力の修得」を目標に新医師臨床研修制度が始まりましたが,求められる医師の基本的な臨床能力のレベルには不明確な部分があります。
大滝 そうですね。医師全員が身に付けなければいけない能力については,教える指導医側にも意識のずれがあります。今回,制度が見直されることとなりましたが,“専門医”としてのトレーニングをもっと早期から始めるべきだ,という意見が多く出されたことにも関係していると考えています。
松村 医師の偏在の問題が生じ,専門医養成のニーズが強くなってきたことも原因の一つと考えますが,長期的にみてその方向性で本当によいのかは少し疑問です。
大滝 ただ,ジェネラルな教育において卒前の臨床教育をもっと充実させたほうがいいということは,少なくとも医学教育関係者の間では共通認識になっています。しかし,卒前の段階で,かなりの医行為を学生が行う場合,それを患者側に理解してもらえるかという議論はまだ不十分です。
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(一部抜粋、太字追加)

ジェネラルの研修をして専門へ進む

  諸外国でもジェネラルの研修をしてから専門に進むというのが一般的です。ジェネラリズムを身につけずに高い専門性を身につけることはできないからです。少なくとも、日本のように「早く専門のトレーニングを」という論調にはならないでしょう。専門性の修得のしかたに対する考え方、ここにひとつの障壁がありそうです。


卒前教育には十分な信頼関係が必要

  これに対して、卒前からジェネラリズムの研修を、という声は高まっているようです。これは好ましいことのように思われますが、ここにもうひとつの障壁があるようです。患者さんに理解していただけるかです。
  十分な研修を積んで現場に出ること、患者さんに理解していただくこと、相互の努力が必要なことです。今のところ、お互いに十分な信頼関係を得られるまでに至っていない、ということでしょう。

  「ジェネラリズムの危機」の影響は深刻です。まだまだ取り組むべきことがありそうです。

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