かぜが治らないので点滴をしてほしいと深夜に受診する女性。
「最初に受診した病院では点滴をしてくれなかったので、翌日別の病院を受診した。抗生剤入りの点滴をしてもらい、調子がよかった。まだよくならないので、点滴してほしい。」
点滴にはかぜの治療効果がないこと、ビタミン剤にも効果がないこと、抗生剤は効果がなく害があることを説明しても納得がいかない様子。症状のつらさを訴えつづけること40分。すでに他の医療機関で十分治療がされており、診察のみでお帰りいただきました。
深夜の救急現場で、救急疾患ではない方にこれだけの時間と労力をかけて、診療報酬は診察料のみ。疲弊します。
こんなブログがありました。ほんとうにうんざりします。
点滴で風邪は治りません
http://blogs.yahoo.co.jp/rijichonikki/21607175.html
いまだに「かぜに点滴が効く」という点滴信仰や点滴依存症が根強い文化となっているようです。
本来、脱水症がなければ保険適応はありませんが、希望されれば安易に点滴をしたほうが労力も少なく、診療報酬も得られ、患者満足度が高くなるため、一部の医療機関では保険診療で行っているのが実態です。それを当然のことのように他の医療機関で要求され、「やってくれないのはおかしい」と患者にすごまれることになります。
同じようなものに痛み止めの注射などがあります。短期的な効果しか期待できず、長期ではむしろ害があるものについても、漫然と繰り返されることもあります。ペンタゾシン中毒のような薬物依存をつくってしまうこともあります。
しかし、これでは長期的視点からあえて点滴を行わない診療を行っている適正な医療機関が不利益をこうむることになります。
点滴依存症は医療機関がつくる医原病です。限りある医療費です。保険請求の厳正な審査をお願いしたいです。