来た球は打つ

 

 週間医学界新聞に松村医院院長の松村真司さんのインタビューが載っています。松村さんは「プライマリ-地域へ向かう医師のために」の著者です。

 実際には就職先なんていくらでもあるし,いくらでも道は見つかるのですが,「専門がないと就職できないのでは」とか「このまま自分は二流の医師になってしまうのでは」という不安があるようです。

 実際に臨床現場では,確実にジェネラリストが必要とされています。僕も今まで,さまざまなところで働きましたが,来るなと言われたことはありません。むしろ「先生のような人がいてくれてよかった」と言われることが多い。ジェネラリストのいい点は「どこに行っても働く場所がある」「どこに行っても役に立つ」ところだと思っていますが,それは従来の考え方からすると「駄目な医者」という扱いになってしまう。また,外からみて分かりやすいラベルもない。そのために,頑張っていても評価されず,「自分のやっていることはこのまま終わりなのか」と思い悩む若手医師をたくさん見てきました。

 もう少し続ければ次のステップに進めて,いろいろな経験が積めるはずなのに,そこが見えない段階で辞めてしまうのはちょっと早い。特に,これから地域に出て行こうと考えている人にとっては,もったいないですよね。アンコールが始まる前に帰るようなものです。

 海外のレジデンシーに入っている人や,大学病院や大病院の総合診療部にいる人など,誰が見ても「君はジェネラリスト」と分かるところにいる人はいいんです。そういう人たちは周囲からの支援も受けやすい。問題は,そういった分かりやすいコースから外れている人です。例えば,地方の小規模な公立病院で働いている医師,専門医としてキャリアを積んできたけれど今はジェネラルに活動している医師。僕もそうですけれど,日々地域医療をしている開業医。そういった,ジェネラリストとして立派に活動しながら「自分はこれでいいのだろうか,自分はこれからどうなるんだろう」と悩んでいる医師は,実は全国に数多くいると思います。


 家庭医や総合医、いわゆるジェネラリストのキャリアパスをどう示していくか。制度やしくみではなく、日常診療の実践をつづけることで、自然に示されていくこともあるかもしれません。しかし、「ふつうの医者」がたくさんいること、そしてその意義について十分認識されているとはいえません。少し前を走っている者として、積極的に情報発信をしていくことが必要なのかもしれません。

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