器具使い回し報道
毎日のように伝えられる採血器具使い回しの報道。
針の使い回し事件を発端として報じられるようになりましたが、最近報道されているのは針ではなく、飛散した血液が周囲に付着してしまうリスクという、比較的感染の危険性の低い問題についてです。
肝炎やHIV感染予防対策は重要ですが、医療者側からは、もっと危険なものが放置されているのではないかと思ってしまいます。
たとえば床屋のかみそり(電気かみそりを含む)の使い回しは? 歯科治療は? 医療者からみて疑問に思うことはあります。
この問題については、PubMedではうまく情報検索ができませんでした。
医療従事者を守るための情報はありますが、利用者感染のリスクについては、うまく見つかりません。
Googleなどを使って少し検索してみると、利用者からの不安の声が散見されます。
いよいよ解決すべき問題ではないでしょうか。
歯科の手袋
最近の日本からの論文をひとつご紹介します。原文入手できず、要約のみです。
Int J Mol Med. 2008 Jun;21(6):791-9.
HBV and HCV infection in Japanese dental care workers.
Nagao Y, Matsuoka H, Kawaguchi T, Ide T, Sata M.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18506374
歯科治療に携わる職員141人に対してアンケート調査を実施。
- 手袋を着用し、患者ごとに変える・・・9人
- 手袋を着用し、破れたら変える・・・36人
- 手袋を着用しない・・・24人
HBs抗原陽性(ワクチン未接種)は27%。HCV抗体陽性者はいなかった。
横断調査の結果ですが、歯科では手袋はあまり変えていないんですね。医科では常識になっていますが。
B型肝炎感染のリスクは高く、ワクチンを義務づけるべきだと結んでいます。患者のリスクについては、この要約では触れられていません。
ガイドライン
歯科治療については2003年のCDCガイドラインの邦訳を見つけました。すばらしい!!(PDF)
http://api-net.jfap.or.jp/siryou/dental_guideline/2003.pdf
職業上の曝露については、海外のガイドラインがたくさんあります。
http://jada.ada.org/cgi/content/full/133/12/1627
http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=573
電気かみそり
電気かみそりもウイルス性肝炎感染のリスクになるのではというcorrespondenceが検索されました。
病棟専用の電気かみそりを、患者同士で手渡しして使っているのを見た、という内容です。
N Engl J Med. 2000 Mar 9;342(10):744-5.
Electric razors as a potential vector for viral hepatitis.
Kelly CR.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10712134
http://content.nejm.org/cgi/content/full/342/10/744?ijkey=04ef98c37e2e7554cdf7b272538efe5985213101&keytype2;=tf_ipsecsha
N Engl J Med. 2000 Jun 15;342(24):1840-1.
Electric razors as a potential vector for viral hepatitis.
Arbeit RD, Goodman RP, Snider GL.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10866563 http://content.nejm.org/cgi/content/full/342/24/1840
施設や病院では、何げなく起こりうることなのかもしれません。
肝炎だけではなく、HIVや未知のウイルスも怖いです。十分注意が必要ですね。
どこで感染したかわからない肝炎は次々に見つかっています。
血液製剤、注射、採血器具までやるのであれば、同じように感染リスクのある床屋、歯科、入れ墨、ピアスなどの業者も徹底的に調査していくべきではないでしょうか。
また、他業種の工夫を共有するような努力には、欠けているように思います。ともに考え、学ぶ取り組みができないか、考えてみたいところです。