家庭医は健康問題が発生した時に、最初にかかる医師になります。「最初にかかる」ために抱える問題の難しさに直面することが、家庭医の宿命でもあります。
ふたつのくじがあるとします。当たり●はずれ○です。
A ○○○○○○○○●●
B ○○○●●
どちらのくじが当たりやすいでしょう。Aは当たる確率は2/10、Bは2/5ですから、当然Bのほうがよく当たるはずです。
同じことが医療現場でも起こっています。名医になるためには、つまり当たりをよくひくためには、当たりくじの多いくじを引けばいいのです。病気の人●健康の人○によみかえてみてください。
つまり、病気の人が多い集団で診療すれば、自然によく当たるようになるのです。
C ●●
こうすれは、当たる確率100%、ぜったい当たる名医になれます。
家庭医は健康問題が発生した場合、最初にかかる医師になります。この集団は深刻な病気の人は少ない集団です。
家庭医 ○○○○○○○○●●
家庭医は多くの病気でない人や治療できる人をふるい分けします。さらに精密検査が必要な人、入院治療が必要な人だけを、専門医に紹介しています。
専門医 ○○○●●
専門医はふるい分けされた集団を診察していますので、家庭医より的確な診断がしやすくなります。さらに稀な病気が疑われる場合や高度な治療が必要な場合に、大学病院に紹介しています。
大学病院 ●●
もうお分かりでしょうか。大学病院の医師は名医になりやすいのです。大学病院では、特に紹介患者の場合、すでにほとんど診断がついていることも多いのです。 診断がついていない場合でも、たいてい大学病院にたどり着くまでには検査や経過など、家庭医を受診した時にはなかった多くの情報量を手に入れているのです。
具合が悪くなった場合、直接大学病院にかかることが効率的でない理由もお分かりでしょうか。大学病院では数少ない当たりくじをひくことは得意ですが、当たりくじが少ないくじをひくのは不得意です。
家庭医から専門医へ紹介する場合、なぜもっと早く判断できなかったのかと責められることがよくあります。これが大きなストレスとなるのですが、たいていは引いているくじの確率が違うから、専門医のほうが情報量が多くなるから、などが理由です。つまり、「診断の難易度」が異なるからであり、診断能力の差ではありません。
家庭医のくじは当たりが少なくなっています。だから、後医は名医になりやすいのです。