本日、子供の頃のムンプス(おたふくかぜ、流行性耳下腺炎)が原因で難聴になったという女性が来院されました。ムンプス感染後に合併症として感音性難聴をきたすムンプス難聴は頻度が非常に低いと言われていますが、原因が特定されることは少ないのかもしれません。
1万5千人に1人の合併症との報告がありますが、日本ではもう少し頻度が高くなってきているとされています。2001年で年間650人と推定されています。
BMJ. 2005 May 14;330(7500):1132-5. Mumps and the UK epidemic 2005. Gupta RK, Best J, MacMahon E. PMID: 15891229
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15891229
Acta Otolaryngol Suppl. 1994;514:9-13. Estimated annual number of patients treated for sensorineural hearing loss in Japan. Results of a nationwide epidemiological survey in 1987. Yanagita N, Nakashima T, Ohno Y, Kanzaki J, Shitara T. PMID: 8073896
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8073896
Auris Nasus Larynx. 2005 Jun;32(2):125-8. Epub 2005 Apr 7. Epidemiological study of mumps deafness in Japan. Kawashima Y, Ihara K, Nakamura M, Nakashima T, Fukuda S, Kitamura K. PMID: 15917168
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15917168
最近、ある新聞の生活欄にムンプス難聴についての記事が出ていました。20年苦しんでこられた患者さんの体験談がいくつか紹介されていました。難聴の原因がムンプスだったということがわからずに長年苦しんでこられたことは、たいへんつらく残念なことです。
記事の中では、最初の内科医がなぜ診断できなかったのか、医師にもっと知ってもらいたい、知っていたらこんな悲劇にあわなかったのに、といった趣旨で医師を非難する内容でかかれていました。しかし、原因が特定されていたとしても、現時点でも有効な治療方法はなく、結果に変わりはなかったと思われます。記事の焦点は医療批判ではなく、むしろ予防の啓発に重きを置くべきではないでしょうか。
ムンプス難聴のサイトです。よく紹介されております。
http://www.geocities.jp/mumps_deafness/