データに弱い日本、メタボ健診でまたも事故

スポンサーリンク


 先日、驚きのニュースが報じられました。

 国のデータベースのシステムの設計ミスのため、メタボ健診の効果の検証ができないという、深刻な事態となっています。

 NHK NEWS WEBからの記事引用です。

 このシステムは厚生労働省がおよそ28億円をかけて整備し、平成21年から運用している「ナショナルデータベース」で、「メタボ健診」を受ける毎年2000万人以上のすべての健診データと、医療機関などが請求した診療報酬明細書のデータが合わせて100億件近く個人情報を暗号化したうえで蓄積されています。厚生労働省はこのデータを突き合わせてメタボリックシンドロームの人がどのような病気になり、いくら医療費がかかっているかを分析し、医療費の抑制につなげる対策を打ち出すことを目指しています。
 しかし会計検査院によりますと同じ人のデータでも健康保険証の番号などが半角文字と全角文字といった異なる形式で提供されると暗号化した際に同じ人のものと認識されなくなるなどの設計ミスがあり、平成23年度からの2年間ではメタボ健診を受けた人の22%しかデータを突合できなかったということです。国は昨年度までの7年間にメタボ健診に1200億円余りの補助金を投入していますが、その効果の検証にもシステムを十分活用できない事態となっています。

 

 メタボ健診といえば、日本で設定された腹囲の基準について、専門家の間でも異論のあった健診です。

 腹囲基準の国際比較です。

f:id:cometlog:20150906141034p:plain

(Alberti, 2009年*1より作図して引用)

 世界的にも心血管疾患の発症が少ない日本人を対象とした、前のめりの厳しい基準でのメタボ健診。その効果はどの程度のものか、結果が注目されていましたが、残念ながらその機会はなくなってしまったようです。

 

国の組織構造が事件の背景か

 年金記録問題をはじめとして度々起きる国の失態。データに弱いというだけではない、国の組織構造の問題がありそうです。歯止めがかからないのでしょうか。このような事故が二度と起きないよう、原因を徹底的に検証していただきたいです。

 

 参考までに、年金記録問題の際にはどのように検討されたのでしょうか。何ら問題が解決されていないようにも思えますが、ふりかえってみたいと思います。

 Wikipediaによると、年金記録問題検証委員会(松尾邦弘座長)では、原因と責任の所在を以下のように報告しています。

問題発生の根本にある問題[編集]

 報告書では、年金記録問題発生の根本は、厚生労働省及び社会保険庁の年金記録管理に関する基本的姿勢にあると結論づけ、その原因として次の要因を挙げている。

  • 厚生労働省及び社会保険庁の年金管理に関する基本的姿勢 国民の大切な年金に関する記録を正確に作成し、保管・管理するという組織全体としての使命感、国民の信任を受けて業務を行うという責任感が、厚生労働省及び社会保険庁に決定的に欠如していた。
  • 年金記録の正確性確保に対する認識の問題 社会保険庁は、年金制度改正・記録管理方式の変更等の際に、年金記録の正確性を確保することの認識が不十分であり、関係する記録・資料を適切に管理していくという組織としての責任を果たしてこなかった。
  • 裁定時主義の問題 社会保険庁は、年金の納付記録は本人がよく知っているはずだから、本人が問い合わせてきた場合のみ、記録を調べて間違いが有れば修正すれば良いという安易な方針(裁定時主義)で業務を行っており、厳密な姿勢を欠いたまま業務を継続した。

問題発生の直接的要因[編集]

 報告書では、約5,000万件の未統合記録が存在することの原因として、次の要因を挙げている。

  • オンライン化する前の記録ミスがそのままコンピュータに残ったこと。
  • 氏名、生年月日、性別、住所を軽視していたこと。
  • 漢字カナ自動変換システムによる記録の誤りがあったこと。
  • 過去の記録の誤りを減らす取り組みをしなかったこと。
  • システムの開発・運用を長期間に渡り特定の業者に依存していたこと。
  • 不正行為防止のための内部事務管理態勢が不十分であったこと。
  • これに加え、年金記録を電子化するさい、紙記録を廃棄させる命令が出されたこともあげられる

問題発生の間接的要因[編集]

 報告書では、上記の年金記録問題発生の直接的な要因を助長する背景となった要因に、社会保険庁の組織上の問題点があると指摘している。
職員団体の問題[23]
 社会保険庁職員の多数派労働組合である自治労国費評議会(現・全国社会保険職員労働組合)が、昭和50年代前半のオンライン化計画などについて、人員削減につながるものであり、労務強化および中央集権化に反対との理由から強く抵抗をし、自分たちの労働環境維持のために偏りすぎた当局と職員団体の間で多数の覚書、確認事項等を結び、平成17年の廃止まで存在していた。また本庁から地方へ通達をする際に、そのような労働組合と事前協議をしなければならない慣習が存在した。こうした職員団体が業務運営に大きな影響を与え、ひいては、年金記録の適切な管理を阻害した一因があると指摘。
三層構造に伴う問題
 厚生労働本省採用のⅠ種職員、本庁採用のⅡ種・Ⅲ種職員及び地方採用のⅡ種・Ⅲ種職員という三層構造が、ガバナンスの低下を招いた。
地方事務官制度の問題
 昭和22年の 地方事務官制度により、社会保険庁の地方に対する指導、監督および管理が行き届いていなかった。 

 

 ニュースで報道された情報からは、データベースのシステムの設計ミス、というほとんど年金記録問題と同じ過ちのように思えます。

 やはりシステム開発や運用は特定の業者に依存していたのでしょうか。

 こんな事件は本当に何度も起こりうるのでしょうか。信じられません。

 

 結果が思わしくなかったからデータを抹消した、ということはまさかありませんよね。疑われても不思議はない事件です。

 国に根本的な問題は解決できないかもしれませんが、ぜひとも原因の究明と再発防止策を講じていただきたいと思います。

 

 

*1:Alberti KG, Eckel RH, Grundy SM, Zimmet PZ, Cleeman JI, Donato KA, Fruchart JC, James WP, Loria CM, Smith SC Jr; International Diabetes Federation Task Force on Epidemiology and Prevention; Hational Heart, Lung, and Blood Institute; American Heart Association; World Heart Federation; International Atherosclerosis Society; International Association for the Study of Obesity. Harmonizing the metabolic syndrome: a joint interim statement of the International Diabetes Federation Task Force on Epidemiology and Prevention; National Heart, Lung, and Blood Institute; American Heart Association; World Heart Federation; International Atherosclerosis Society; and International Association for the Study of Obesity. Circulation. 2009 Oct 20;120(16):1640-5. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.109.192644. Epub 2009 Oct 5. PubMed PMID: 19805654.

Community Medicine Toolbox, Copyright © 2003, 2007-2017 地域医療ジャーナル