スリーマイル島原発事故コホート

 
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  福島原発事故の復旧作業が続けられています。作業員の無事と早期の復旧を願うばかりです。

  放射能被曝の影響については、ちょっとわかりにくいところでもあり、情報が錯綜しています。「ただちに影響が出るものではない」という報道だけでは、将来はどうなっていくのか、若干不安になります。

スリーマイル島原発事故

  1979年、アメリカ合衆国ペンシルバニア州で起きた、スリーマイル島原子力発電所事故。国際原子力事象評価尺度 (INES) においてレベル5と、今回の福島と同程度の事故とされています。
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スリーマイル島原子力発電所事故 - Wikipedia
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よくわかる原子力 - スリーマイル島、チェルノブイリ原発事故と被害の実態
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asahi.com(朝日新聞社):福島第一原発はレベル5 深刻度、スリーマイル並み
2011年3月18日18時28分
  原子力安全・保安院は18日、福島第一原発1~3号機の事故について、事態の深刻さを示す国際原子力事象評価尺度(INES)の暫定評価を、米国スリーマイル島の原発事故と並ぶ「レベル5」(広範囲な影響を伴う事故)に引き上げた。
  施設内で放射性物質が大量に放出しており、炉心の損傷の可能性も高いため。
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  放射能について理解するには、こちらを。
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福島原発の放射能を理解する
カリフォルニア大学のモンリオール(B. Monreal)氏による講演のスライド
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  スリーマイル島原発事故から32年。周辺の住民はどうなっていったのか。調べてみることにしました。
  20年間追跡したコホート研究が2003年に発表されていました。
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Talbott EO, Youk AO, McHugh-Pemu KP, Zborowski JV. Long-term follow-up of the residents of the Three Mile Island accident area: 1979-1998. Environ Health Perspect. 2003 Mar;111(3):341-8. Erratum in: Environ Health Perspect. 2003 Jul;111(9):A453. PubMed PMID: 12611664; PubMed Central PMCID: PMC1241392.

■スリーマイル島原発事故当時、原発から5マイル(8km)以内に住む住民を
■20年間追跡すると
■一般住民と比べて
■死亡率、がん死亡率はふえるか
■予後、コホート研究

■結果(※※)
住民32135人のうち白人31246人について
標準化死亡率(SMR)(期待値は周囲3地区のデータを使用)
総死亡
  男性 108.0 [95%信頼区間 104.0-112.1](2778/15539人)
  女性 116.7 [95%信頼区間 112.4-121.2](2738/15707人)
がん死亡
  男性 103.7 [95%信頼区間 95.9-112.0](653/15539人)
  女性 99.8 [95%信頼区間 91.7-108.4](563/15707人)
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  論文では自然放射線量、曝露したガンマ線などによって層別解析を行っています。ガンマ線の最大被曝量の平均値は24.5mrem(0.25mSv)で、40mrem(0.4mSv、胸部レントゲン検査3回分)以上の被曝は18%とのことです。

死亡率はやや高い

  スリーマイル島住民の標準化死亡率は男性8%、女性16%高かったのですが、被曝量が多くなると総死亡やがん死亡が増えるという一定の傾向とはなっていないようです。自然放射線、喫煙、教育レベルなどは考慮されていますが、その他のいろいろな交絡因子がありうるため、どこまでが事故の影響なのか、なんともいえないという結果でしょうか。

  がんについては、乳腺とリンパ・造血器を除いては、あまりはっきりとした傾向がみられていません。

  心疾患は多くなっているのですが、事故後10年の発症率が高くなっています。ガンマ線の被曝量とは関連がみられず(むしろ被曝が少ないほうが発症が多い)、被曝以外の影響なのでしょうか。

福島原発事故コホートを

  特筆すべきは、事故後の混乱の中で、20年におよぶ住民の追跡調査がなされていることです。放射能による長期的影響はまだわかっていないことも多く、住民の健康状態についてはもれなく追跡していくべきでしょう。

  ぜひコホート研究を開始していただきたいです。

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