インフルエンザによく効く薬はありますか?

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  ある市の広報の原稿依頼を受けたのですが、ボツになってしまいました。「現状で行われている治療と異なるため混乱をきたす」という配慮からということでしたが、一部修正の上、ここで掲載したいと思います。

  実は、このような扱いを受けることは、「なぜか」よくあることです。科学的根拠に基づいた説明はなかなか受け入れられていないようです。

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科学のきまり

  みなさんは薬が「よく効く」というと、どの程度の効果を期待されるでしょうか。薬を飲んだ人全員が、たちどころに症状が消え、病気が直ってしまう。重症化したり、死んだりすることはない。あるいは、100%病気の予防ができる。
  そのような治療があればよいのですが、残念ながら今のところそこまで効く薬はこの世に存在しません。よく効く人もいれば、効かない人もいる、それが治療の現状です。

  ひとりひとりが薬を飲んだ効果はみな違いますから、われわれ医師が薬を処方した人だけで薬の効きめを判断してしまうことは、誤りのもとです。もし、たまたま効果の小さい人だけを治療した場合、薬の効果を過小評価してしまいます。逆に、効かない薬を、よく効くと過大評価してしまうこともあります。医師や患者さん自身もそうですが、限られた体験だけで薬の効きめを判断してしまうことは、実はたいへん危険なことなのです。

  そこで、薬の効きめは研究で確かめることにしているのが科学のきまりです。全く同じ条件で薬とプラセボ(ニセ薬)を使ってその効果を比べた時に、明らかな効果の差を立証できるものを「効く」と判断することになっています。(このような研究の方法を「ランダム化比較試験」といいます。)

抗インフルエンザ薬の効果

  それでは、インフルエンザに効くといわれる抗インフルエンザ薬の効果はどれほどなのでしょうか。10~15年前のいくつかの研究で立証されていますが、抗インフルエンザ薬を使うと、プラセボと比べて平均16~20時間程度、症状が早くよくなりますが、重症化する可能性はプラセボと差がない、という効果です。

  もともとインフルエンザ自体、自然に治る病気です。抗インフルエンザ薬を飲まなければ治らないということはありません。これらの研究でも、プラセボだけを飲んだ人も元気に回復しているのです。海外では抗インフルエンザ薬を入院患者や重症患者に限って使用しているところもあるようです。

  インフルエンザの症状が少しでも早くよくなることが大事な場合もありますが、治療費や副作用の危険性が気になることもあります。薬は万能ではないことを患者さん自身もよく理解し、薬の力をうまく借りながらも、どのように治療していくのか医師とよく相談しながら治療を進めていくことが大切です。
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  科学的根拠に基づく情報は、内部でもなかなか受け入れられないようです。エビデンスといえばCMECジャーナルクラブ。編集部ブログにリンクしましたので、ご参照ください。
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