本当にワインは糖尿病にいい?

 
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 最近、他院で糖尿病と診断され治療を受けている女性が、精査目的で紹介されてきました。HbA1c 12%、血糖値400mg/dL、とのことでした。

「ワインが糖尿病にいいとネットに書いてあって、飲もうと思っているんですけど、どうでしょうか。」 

 

 いくら寛容でもHbA1c 12%の方に大丈夫ですよ、とは言えず、禁酒をすすめました。 それにしても、ワインで血糖値が下がるという情報には本当に根拠があるのでしょうか。

 Google検索してみると、確かに赤ワインが体にいい、という情報をよく目にします。

 これが、糖尿病ではどうなのでしょうか。情報検索して医学的見地から検討してみたいと思います。

過去記事から

 以前検索して記事にした情報から、ひとつ。

Metabolism. 2008 Feb;57(2):241-5. Metabolic effects of alcohol in the form of wine in persons with type 2 diabetes mellitus. Bantle AE, Thomas W, Bantle JP.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18191055

  • 糖尿病(HbA1c<8.5%、経口血糖降下薬治療中)の人18名に
  • 夕食時にワイン240mLを摂取してもらうと
  • グレープジュースに比べて
  • 翌朝の血糖値が下がるか、30日間でHDLコレステロールが上がるか
  • 治療、n-of-1試験

結果
 短期的には血糖値やインスリン値には差がなかった
 30日間でHDLコレステロールに差はなかった

 

 かといって、ワインは大丈夫、という結論ではありません。著者は、代謝にどのような害があるかわからないので、糖尿病の人が節酒するのをやめさせるべきではない、と警鐘を鳴らしています。

 まだまだ議論がありそうです。

 

PubMed検索で

 PubMedのclinical queriesを使って検索。"diabetes wine"と入力して5件ヒットしました。(ここまで10秒)そのうち一つ目がズバリ的中でした。(30秒)


 2007年12月のイスラエルの多施設ランダム化比較試験です。

Diabetes Care.
2007 Dec;30(12):3011-6. Epub 2007 Sep 11.
Glycemic effects of moderate alcohol intake among patients with type 2 diabetes: a multicenter, randomized, clinical intervention trial.
Shai I, Wainstein J, Harman-Boehm I, Raz I, Fraser D, Rudich A, Stampfer MJ.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17848609

  • 糖尿病と診断されている人に
  • 3か月間、毎日ワイン150mLを飲んでもらうと
  • ノンアルコールビールと比べて
  • 血糖値(空腹時、食後)は下がるか
  • 治療、ランダム化比較試験

結果

 空腹時血糖は下がった。
 アルコール:139.6から118.0mg/dL、対照:136.7から138.6mg/dL
 食後2時間の血糖値は変わらなかった。

 

 少なくとも空腹時血糖は下げるらしい。さらにHbA1cが高い人(糖尿病コントロールが悪い人)のほうがよく下がるらしい、ということのようです。(ここまで3分)

 それではこの結果をあの糖尿病の方に適用して説明していいのでしょうか。予想以上にすぐに論文が見つかったため、彼はまだ待合室にいます。

 すぐに図書館の電子ジャーナルにアクセスして、論文を読んでみることにしました。(便利な時代になりましたね・・・)

 

 この論文の序文には、このような記載が。

 いくつかの小規模・短期間の研究で、5-20人の2型糖尿病患者について適度なアルコール摂取で血糖値が下降したというものがあるが、血糖コントロールに変化がみられないとする研究もある。

 

 なろほど。2007年の時点では、アルコールの血糖コントロールに対する効果については結論が出ていない、ということのようです。この研究でも、空腹時血糖は下降する、という結果でしたが、飲酒が糖尿病にいいと結論づけられるものではなさそうです。

 また、今回の対象患者の平均HbA1cはアルコール群7.37%、対照群7.08%でした。(有意差はないようですが・・・)

 さきほどのHbA1c 12%の男性については、やはりワインを勧めないというのは妥当な判断と思われました。再度本人には説明し、納得していただきました。

 

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