治療できるのにやれないもどかしさ

 
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 深夜に外傷の方が受診されました。内科系当直では外科医が当直していないため、受け付けることはないのですが、直接窓口に来られてしまったため、診察することになりました。診察上、明らかな肋骨骨折と皮下気腫を認めました。緊張性気胸の徴候はみられませんでした。

 ここからは胸部X線検査を行い、外傷性気胸についてはトロッカーを挿入して保存的入院治療、という流れですが、そうはいきません。レントゲン技師を深夜に呼び出して30分、保存的治療となるにしても、臓器損傷や出血など外科的治療が必要となる可能性もあり、入院させるには当直ではない外科系医師の深夜の呼び出しも必要です。
 内科系当直医が、外科医がいる医療機関で外傷治療をする是非が問題となる場合もあります。しかし、外科系当直医がいる医療機関までは、救急搬送に1時間以上かかるのです。

 結局、検査する前に搬送がベターと判断しました。受け入れ先が見つかるまで30分以上かかりましたが、治療開始までには2時間以上かかってしまったことになります。窓口ではなく直接救急車に乗っていたら、もっと早く治療をはじめられたでしょう。

 治療できるのにやれないもどかしさ、どの選択肢を選んでも大変な追い込まれる状況、これが救急現場の実態ではないでしょうか。

 救急車受け入れの判断も非常に難しくなっています。救急隊からの情報だけではどんな患者さんかを予想するには十分ではありません。不確かな情報をもとに、受け入れてよい患者さんかどうかの選別を、ほとんど直ちに行わなくてはなりません。

 医療機関は時間帯によって提供できるサービスが違っています。「夜間であっても最も適切な医師が最先端の医療を提供すべきだ」という縦割りルールでは、夜の専門医・受け入れ先探しがこれからも加速していくことでしょう。救急車のたらい回しも多くなるはずです。
 この風潮は、疲れ果てた臨床医の訴訟社会に対するかすかな抵抗、心の叫びなのかもしれません。

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